今まで、歯科衛生士シリーズとしていくつかお話をしてきましたが、そもそも衛生士の仕事内容についてしっかりお話できていませんでした。そこで、今回は、ほとんどの方が就職する一般歯科クリニックでの仕事内容についてお話していきます。
衛生士のメインの業務は、歯周病の治療と予防です。歯周病とは、歯を支えている周りの骨がなくなった結果揺れが生じ、ひどい時は抜けてしまう病気で、現在歯を失ってしまう原因の第1位です。
具体的には、歯周病の原因である、歯周病細菌が潜む汚れや歯石を専門の機械で除去していきます。また、歯周病は毎日の歯磨きがしっかりできることが大変重要なので、患者さんのお口の状態に最適な歯磨きの仕方などを考えてご提案し、実践していただけるよう指導することも歯周病治療には欠かせません。
歯周病は、歯がなくなってしまうだけでなく、糖尿病や認知症、脳血管疾患などに悪影響を与えることがわかってきています。そのため、患者様の将来の健康を支えていく上で、今まで以上に衛生士の仕事は大変重要なものになっています。
歯周病と違い、むし歯の治療は衛生士はできませんが、むし歯の予防は大切な業務の一つです。むし歯は少なくなってきたとはいえ、まだまだ多くの方がむし歯やその後の治療で悩まれています。患者様の状況に合わせた、最適な毎日のケアの仕方や、リスクに応じて食生活などについても指導していきます。
むし歯治療などは歯科医師が行いますが、この治療の時に歯科医師の横でお口の中の水を吸ったり、器具や材料を準備する診療のアシスト業務を衛生士が行うこともあります。患者様が安全に、かつ効率よく治療を受けられるよう、治療の順番や器具、材料、歯科医師のクセなどを覚えることが大切です。患者様や歯科医師とコミュニケーションをはかり、相互にとってより良い環境を作っていく仕事力、人間力が求められます。
また、歯科医師が別の方の治療をしている時間を使って、型取りやクリーニングを行うこともあります。患者様に不要な待ち時間を作らないことも歯科衛生士の大切な仕事です。
時には、学校や介護施設などの院外へ出て、むし歯予防や口腔ケアについての講義や実習を行います。自院の患者様だけでなく、地域の方々の健康に寄与する大変重要な仕事です。
超高齢社会に突入し、ご高齢の方の割合が増えています。中には、持病や、足が悪くなり、歯科医院を受診することが難しくなる方も多いです。そういった方のお家や、介護施設に伺い、むし歯や入れ歯の治療をすることを訪問歯科診療と言います。衛生士もこの訪問診療に同行し、歯科医師のアシストを行ったり、患者様の口腔ケアや嚥下(飲み込み)のリハビリテーションなどを行います。
最近の死因の上位に肺炎がありますが、これは誤嚥性肺炎のことが多いです。高齢の方は、足腰が弱るのと同じように飲み込む力が衰え、食べ物や飲み物が誤って胃ではなく、肺のほうに入ってしまうことがあります。これを誤嚥と言い、お口の中にいる細菌が一緒に肺に入ることで起こる肺炎を誤嚥性肺炎と呼びます。
この誤嚥性肺炎を防ぐことも、歯科衛生士の大切な仕事の一つです。具体的には、口腔ケアでお口の中をきれいにすることで、お口の中の細菌の数を減らし、誤嚥性肺炎のリスクを下げます。また、衰えた飲み込む力を回復させるためのリハビリテーションも行います。
ここに挙げた以外にも歯科衛生士の仕事はありますが、歯科クリニックでの主な仕事はだいたい上のようなものになります。これらの仕事を通じて、他の方々のお役に立ち、大袈裟ではなく日本の未来を変えていくことができる尊い仕事、それが歯科衛生士です。これから将来の仕事を考える方は、衛生士の魅力に関する他の記事も是非読んでいただき、参考にしていただければと思います。