本日は、前回のブログでお伝えしたように、災害時の口腔ケアなどについてお話していきます。元旦に起こった北陸地震では、津波の被害こそ多くはありませんでしたが、建物の倒壊などで多くの方が亡くなられ、今も避難所生活をされている方も多いです。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、このブログの内容が何らかの形で被災された方の支援につながればと思います。また、地震などはいつ誰が遭遇してもおかしくない災害ですので、是非多くの方に読んでいただき、事前の備えとして頂ければと思います。本当は、現地への支援にいければ一番良いのですが、仕事と家庭の両面でどうしても留守にする事が難しい状況ですので、こういった形になってしまいますが、ご容赦ください。
東日本大震災や、熊本地震では震災後に高齢者の肺炎が急増し、多くの方が亡くなられました。災害が関連して亡くなられた方の約1/4が肺炎が原因であったと言われています。これは、避難所での生活では、満足に歯磨きができない事が一つの要因です。歯ブラシが無いということもありますが、一番の要因は水不足です。災害時は、飲む水の確保も難しい状態で、水は非常に貴重です。そんな中、歯磨きやうがいに水を使うことを躊躇する方が多いようです。しかし、特に高齢者の方はお口の中で細菌が増えることで、誤嚥性肺炎になるリスクが高くなってしまいます。避難所生活は栄養状態も偏り、極度のストレスもかかるため、元気であった方があっという間に、状態が悪くなってしまう(フレイル)ことも多いです。そうならないよう、以下に災害時の口腔ケアなど誤嚥性肺炎にならないための対策を記載します。
小さめのタオルやハンカチを水で濡らして、硬く絞りそれで歯の表面を磨いてください。それも難しければ、食後に少量の水やお茶で数回に分けてうがいをするだけでも、効果はあります。しかし、できることなら事前に歯ブラシを用意しておきたいです。防災グッズの中に、家族分の歯ブラシは用意しておく事が理想です。また、避難所の近くに歯科医院がある場合、災害時に在庫の歯ブラシを避難所に提供してもらえないか、相談してみましょう。
避難所での水は大変貴重です。できるだけ、少量で済むよう次のような工夫しましょう。
歯磨き粉を使うと、どうしても多くの水でうがいが必要になりますので、それらは使わなようにしましょう。
歯磨きの際は、少量の水をコップに入れて歯ブラシを濡らします。ブラシが汚れてきたら、ティッシュなどで拭いながら磨きましょう。最後に少量の水を2〜3回に分けてうがいをしましょう。液体歯磨きや洗口液がもしあれば、水の代わりに使ってください。
避難所での生活は、どうしても栄養が偏りがちです。最初の数日の食事は菓子パンなどがメインになり、炊き出しなどが始まるまでにどうしても時間がかかります。若い方は、それでもなんとかなりますが、高齢な方は避難所でのストレスなどもあり、一気に体調が悪くなる(フレイル)ことも多く、そうなると誤嚥性肺炎の発症リスクも増してきます。できる限りの栄養を取れるよう対策をしましょう。
災害時は、突然の避難で入れ歯を持っていない方や、ストレスのため食欲がなくなってしまう方も多いです。こちらは、森永から出ているクリミールという商品ですが、非常に栄養価が高く、ジュースのように飲めるので、入れ歯や食欲がなくても簡単に栄養を摂取する事ができます。270日ほど保存もできるので、ご高齢の方は防災グッズとして、準備しておかれることをお勧めします。また、実際の避難所で栄養価の高い食品を体に入れることはとても困難ですが、都道府県の栄養士会に連絡することで、栄養の支援を受けられることもあります。ご高齢の方は、避難所での生活が始まると同時に、そういった所に連絡を取る事ができないか、試みてみることも大切です。
先ほどからフレイルという言葉を何度か使っています。これは、心身共に衰えてしまった状態を指し、介護が必要になる前段階です。避難所という日常とは違うストレスがかかる場所で、満足な栄養を取れず、体を動かさないことで災害前は元気だった高齢者があっという間にこのフレイルの状態になり、体調を崩していく事がとても多いです。このフレイルにならないために、避難所でもできる体操をご紹介します。
https://www.city.asaka.lg.jp/soshiki/23/koronaundou.html
上のリンクは埼玉県朝霞市のホームページですが、大変わかりやすくまとまっており、是非こちらを参考にして頂ければと思います。特に、顔の運動については必ず行うようにしてください。
また、上記リンクでは当院が度々コラボをさせていただいている、茅野駅前のthe BIRTH & daysさんによる「お家でできる、簡単な体操」の動画をご覧いただけます。動画でわかりやすくなっておりますので、是非こちらもチェックしてみてください。
いかがでしたでしょうか?こういった事が、必要にならない事が最良ではありますが、もしもの時のために知って、備えておいて頂ければと思います。簡単な内容ではありますが、とても大切な事ですので、是非多くの方に知っていただき、何らかの形で被災された方への支援にもなれば幸いです。