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歯並びが悪いと何が良くないのか?

こんにちは。今回は、歯並びが悪いということがどんな悪影響を体に与えるのか、というお話をしてみたいと思います。実は、似たようなお話を小児歯科シリーズでも以前にブログに書かせてもらっています。https://hf-dental.com/?p=492

話の大筋は一緒なのですが、今回は大人に特化した内容にしたいと思います。正直、他の歯医者さんではなかなか聞けない内容も書く予定ですので、是非参考となさってください。

歯並びが悪いと呼吸がしにくくなる!?

 以前は、歯並びが悪いと、見た目がよくなく、歯ブラシもしにくいのでむし歯になりやすい。だから歯並びを綺麗にして、美しく、むし歯になりにくい状態にしましょう、と言われていました。しかし、最近は上の絵のような歯並びの方は、呼吸がしにくくなるということが言われてきています。

 歯並びと呼吸がどういった理由で関係してくるのでしょか?まず考えなくてはいけないことは、なぜ歯並びが悪くなってしまったのかということです。これは、幼少期に顎の骨の発達が不十分だったため、歯が全て生えそろう十分なスペースがなく、結果として上の絵のように歯が重なって生えてしまうために起きてきます。つまり、歯並びが悪い方というのは、総じて顎の骨の成長が不十分なのです。

上の写真は顎の骨がしっかり成長した場合の概念図です。上顎の骨は十分に成長すると青い矢印のように、前へ成長して行きます。下顎は上顎の影響を受けるため、上顎が前に成長すれば、自然と下顎も前へ成長して行きます。これが正しい成長です。

では、不十分な成長はどうなるのでしょうか?上顎は不十分な成長をした場合、上の絵の青矢印のように、下に向かって成長して行きます。この時、下顎は上顎に押され、赤の矢印のように、後下方へ成長することになります。下顎が後下方へ成長することによって、気道が下顎によって押されて狭くなってしまいます。このようにして、実は日常的に呼吸がしにくい状態が顎骨によって作られてしまうのです。本人はこの状態で生活しているので、呼吸が苦しいという自覚はありません。しかし、この気道が狭いことを解消するために、やや頭部を前上方へ持ち上げ、スニッフィングポジションという位置に頭部を無意識に持ってきて、バランスをとるためにストレートネックや、猫背になって行きます。猫背の人は、実は呼吸がしにくい状態になっており、その代償でそのような姿勢になっていることがほとんどです。

歯並びが悪いと睡眠時無呼吸のリスクが上がる!?

前述したように、歯並びが悪いかたというのは、日常的に呼吸がしにくい状態にあります。そして、そういった方は実は睡眠時無呼吸症候群になるリスクがとても高いのです。睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に呼吸が止まり、その間、体へ酸素の供給ができなくなってしまう病気で、日中眠くなり、仕事効率が落ちたり、居眠り運転などのリスクも上がります。重症になると、高血圧、脳血管疾患などの循環器系の病気のリスクが上がり、8年後の生存率は6割程度と言われています。これは、乳がんとほぼ同じ生存率ですので、睡眠時無呼吸症候群は実はとても怖い病気なのです。

では、なぜ歯並びが悪いと睡眠時無呼吸症候群になりやすいのでしょうか?

 あまりいい画像が手に入らず、少し加工してしまっているので、あくまで概念図としてイメージしていただければと思うのですが、左側が成長が不十分な下顎。右側が正常に成長した下顎です。不十分な成長の場合、歯で作られるアーチが狭いことがわかります。そしてここには、舌があります。あまりにアーチが狭く、ここのスペースが狭い場合、舌はこのアーチの中にとどまることができず、喉の方へやや引っ込むような形になります。その状態で、仰向けで寝ると、舌が重力に引っ張られて、気道を塞ぎやすくなってしまいます。これが寝ている間に起こることを睡眠時無呼吸と呼びます。

本当にそんなことで、無呼吸になるのかと思われるかもしれませんが、私(副院長)もこういったことを知ってから、患者さんのお口を注意して見ながら診療してきました。そのため、今ではある程度その方のお口をみただけで、その方が睡眠時無呼吸かそうでないかが大体わかるようになってきました。その的中率は9割を超えています。いくつかの兆候はあるのですが、前述したアーチが狭いというのもその兆候の一つです。

睡眠時無呼吸症候群というと、太った人や、ご高齢の方がなるイメージがあるかもしれませんが、歯並びの悪い方は、もともとそのリスクが高いので、早ければ30歳くらいからその兆候が出始めます。そのまま放置しておくと、50代で重度の無呼吸になり、8年後には4割の確率で・・・ということも決してあり得ない話ではないわけです。

いかがでしたか?歯並びが悪いということは、見た目以上に非常に大きな問題があるということがお分かりいただけたのではないかと思います。では、そういった方はどうしていったらいいのでしょうか?次回は、睡眠時無呼吸症候群と診断された場合の治療法についてお話していきます。