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むし歯の再発を防ぐには

むし歯治療をしっかりしたはずなのに、数年経ったらまた詰め物の下でむし歯ができており、再治療が必要になってしまった。こんなご経験はありませんか?むし歯治療をされた方であれば、多くの方が思い当たると思います。しっかり治療したはずなのに、なぜ数年でまたむし歯になってしまうのでしょか?処置をした歯医者さんがあまり上手ではなかったのでしょうか?それとも他に何か理由があるのでしょうか?

今回は、むし歯の再発リスクを減らす治療のお話です。実は、むし歯の再発には、マイクロクラックと呼ばれる歯の亀裂が深く関係していることが、近年わかってきています。マイクロクラックとは、手術用顕微鏡で見たときに見える歯の小さなひびのことです。下記写真の、黄色い矢印の先にある線がマイクロクラックです。他にもよく見ると、複数のマイクロクラックがあることがわかります。

臨床応用顕微鏡歯科学会会長の秋山勝彦先生は、このマイクロクラックにむし歯菌(ミュータンス菌)が侵入し、歯の内部でむし歯が形成されるという、新しい説を世界で初めて提唱され、その研究をされました。それによれば、歯のエナメル質よりも柔らかい、銀歯やプラスチックによって治療が行われた歯には、100%マイクロクラックが発生し、条件にもよりますが、むし歯がその先に存在している可能性があるということです。

そのため、むし歯の治療をする際には、手術用顕微鏡でこのマイクロクラックの有無を確認し、そのクラックにそってむし歯が存在するかを調べ、そのむし歯を除去し、さらにそのクラックからむし歯菌が侵入してこないようなバリアを作る必要があります。この一連の治療をマイクロクラックリペアラーテクニックと呼び、治療方法は秋山先生によって確立されました。このマイクロクラックリペアラーテクニックを行わない場合、むし歯の見落としがある可能性が高いですし、今後そのクラックからむし歯になってしまう可能性もあります。つまり、どれだけしっかり治療したように見えても、むし歯の再発が起こり、再治療が必要になる可能性が高いということです。

また、マイクロクラックリペアラーテクニックを行っても、新たなクラックができてしまった場合は、そこからむし歯になってしまいます。そのため、新たなクラックが入らないような詰め物にする必要があります。歯のエナメル質とほぼ同じ硬さの詰め物であれば、マイクロクラックは生じません。そのため、詰め物や被せ物はエナメル質とほぼ同じ硬さ(400MPa)であるe-maxと呼ばれる素材で治療をしていきます。これは、一般的にセラミックと呼ばれるものです。その他にも、むし歯が大きく、形が複雑になるような時は、ジルコニアという素材で治療をしていきます。このジルコニアは非常に硬いため、噛み合う歯にマイクロクラックを作ってしまう可能性があり、使用を控えていましたが、近年柔らかく、エナメル質の硬さに近いものが出てきたため、状況によってはジルコニアでの治療を行います。

銀歯やレジンといった素材は、歯のエナメル質よりも柔らかい素材になるので、治療後に歯の表面や内部にマイクロクラックを作ってしまい、むし歯の再発リスクが高くなってしまうのです。

セラミックインレー(参考写真です。実際に、当院で製作されたものではありません。)

以下に、秋山先生が解説されている動画のリンクを掲載しますので、よろしければご覧になってください。歯科医師向けの動画でやや難しいかと思いますので、ご不明点、ご質問などあれば当院副院長までお気軽に、お問合せください。https://www.youtube.com/watch?v=7Ay4z3TIOl8

まとめると、従来のむし歯治療は、マイクロクラックとそれによって生じたむし歯を治療できず、新たなマイクロクラックも生じることでむし歯の再発、再治療のリスクが上がってしまっているということになります。

当院では、むし歯治療をする際、できる限り再発と再治療のリスクが少ない、このマイクロクラックリペアラーテクニックと、セラミックによる治療をおすすめしています。また、これらの処置は、手術用顕微鏡を用いた高度な治療テクニックである、スリーステップ秋山メソッドを応用して行います。スリーステップ秋山メソッドとは、秋山先生が開発された手術用顕微鏡を用いたテクニックで、トレーニングを積んだ臨床応用顕微鏡歯科学会の会員のみが行うことができる、超精密歯科治療です。これらの治療は保険適用ではないため、自由診療となり、診療時間と治療費が保険診療よりは多くかかってしまいます。目安としては、保険診療が30分の治療が2回で、費用が約1万円なのに対し、セラミック治療は、治療時間が約90分と30分の2回。治療費は77000円(税込)となります。治療時間と費用がかかりますが、新たなむし歯を防ぐ可能性が高い、世界で唯一の治療法です。

スリーステップ秋山メソッドを応用した当院の歯科治療の一例

ここまで、お読みいただき、むし歯の再発をできる限り抑えたいという方は、マイクロクラックリペアラーテクニックとセラミック治療をご選択ください。通常の歯科治療をご希望の方は、保険診療での治療も行えますので、ご希望の治療方法をお伝えいただければと思います。ご不明点、ご質問などありましたら、お気軽に当院副院長までお問合せください。